介護の業務を続けていく中で清拭の業務があります。清拭は全身の清潔保持を目的としており、介護を続けていく中での全身の皮膚の状態観察なども重要な内容の1つです。

清拭にもマニュアルが存在し正しい清拭の手順などがありますが、普段から使用している清拭タオルや道具によってはマニュアル通りに清拭をおこなうことが難しかったり、感染リスクなどを負うことにも繋がってしまいます。

清拭に必要な技術には、どのような方法が適しているのでしょうか。

清拭が必要なのは、どのような時?


清拭が実施される時というのは、利用者さん自身の清潔保持が難しいと判断された時です。

例えば、

熱発などで入浴ができない状態が続いた時、
・強く入浴を拒否するなどの状態の時
排せつ漏れなどの状態の時
オムツ交換の時

などが挙げられます。清拭は普段からいつ行われても不思議ではないということになります。

また、利用者さんの状態によりマニュアル通りに事が進まないこともよくありますよね。

認知症の悪化で暴力的な方もいますし、食事を激しくこぼしてしまうことも珍しくありません。

そして急な嘔吐、失禁などの状況も考えられます。急いで職員が近くのトイレに誘導したり、清拭をおこない衣類をその場で交換することもあるでしょう。

ベット上でお互いが了承しあって清拭をおこなうのが清拭だけなのではなく、介護現場では日常的に清拭がおこなわれているのです。

清潔で温かい、使い捨てタオルが最適

清拭マニュアルでは、「清潔な温かいタオル」の準備が必要であるといわれています。

しかし、介護現場では時間が常に動いていますので、マニュアルに沿って毎回きっちりとした準備をおこなう時間を確保することは非常に困難です。

食事介助で、全介助の利用者さんへの介助をおこなう際、食事が口からこぼれてしまったり、嚥下が上手くいかずに咳き込んでしまうことがあります。

手元にあるおしぼりで、利用者さんの口回りを拭いたり、時には手元やテーブルに散らばった食事を同じおしぼりで拭いてしまうこともあるでしょう。

そして、そのおしぼりは洗濯機でまとめて回し、再度おしぼりとして利用されます。排せつ介助や身体を清拭する時も、同じように洗濯し再利用しているケースが多いです。

感染症リスクを忘れない


また、清拭をおこなうということは、利用者さんへ直接触れている介護になりますので、感染のリスクなどは常に高い状態であるということです。

高齢の方の皮膚は基本的に弱く、少しタオルで力を入れてしまっただけでも出血のリスクがあります。乾燥肌の利用者さんの場合は、皮がポロポロとめくれていたり、自分で掻いてしまい、傷になっているケースもあるでしょう。

皮膚は顔、身体、手、足などによって状態は異なりますが、常に肌に触れていることになる清拭は、タオルに感染リスクが常について回るということになります。

その状態で他の利用者さんの傷口に触れてしまったり、他の物に無意識に触ってしまうだけでも感染のリスクは広がってしまうことを忘れてはなりません。

清拭は利用者さんにとって欠かせない介護技術

清拭がおこなわれることにより、利用者さんにとっては新たな感染リスクを抑えるという効果が期待できます。

高齢の方は皮膚が弱いということは上記で述べましたが、清拭をマニュアルに沿って実施する場合には、皮膚をいたわりながら清拭をおこなうという技術が必須となります。

排せつ介助でよくあるケースですが、排便を拭き取ろうとして力強く皮膚を擦り付けてしまったり、何度も同じ箇所をゴシゴシと拭いてしまうことがあります。

その状態を続けていると、想像以上に皮膚に負担がかかってしまい、出血させてしまったり、利用者さんに不快を与えてしまうことになりかねません。

デリケートな箇所をケアする際には、清拭技術の基本を知っているかどうかで、介護技術にも差がでてくるのです。

清拭のコツ① 清拭タオルの温度

その清拭タオル、温度は大丈夫ですか? 清拭の際、問題点の1つに「温度」があります。

通常、清拭マニュアルでは熱いお湯でタオルを絞り、適温になるまで少し冷やし、利用者さんに確認を取りながら清拭を進めていくのが通常です。

しかし、介護現場では、時間に追われていることが多いため、道具を準備するまでの手間や時間が長く感じられます。

そして、急ぎすぎてしまい、お湯を運ぶ際に床に水をこぼしてしまうこともあります。水滴が床についたままの状態というのは、想像以上に転倒リスクが高くなります。

また、熱い状態で皮膚を清拭してしまったり、逆にお湯が冷めてしまい、冷たい状態で皮膚を清拭してしまうなどのミスに繋がってしまいがちです。

利用者さんにとっては、僅かな温度変化にも敏感に反応してしまう原因にもなり、怒らせてしまったり、クレームに繋がることも珍しくありません。その時点で、職員と利用者さんの信頼関係が崩れるきっかけになることもありますので、タオルの温度には気をつけましょう。

清拭のコツ② 清拭をおこなう際の順番

清拭をおこなう流れとしては、心臓より遠い場所から開始していきます。全身を清拭する場合、まずはから始めていきます。

〇顔を清拭する場合

特に目やになどの溜まりやすい目元は、目頭から目尻に向かって流すように拭いていきます。よく逆に、目尻から目頭に向かって拭いてしまうケースが多いので気をつけておきましょう。顔の中心から外に向かってタオルを動かしながら顔全体を拭いていきましょう。

〇耳〜首周りを清拭する場合

耳はその細かい形状ゆえ、清拭タオルが隙間まで入りにくいことがあります。指に清拭タオルを巻き、細かい部分まで拭き取ることを意識しておきましょう。

特に、耳の裏部分も垢がたまりやすく、見落としがちな部分です。丁寧に動かしながら清拭を進めていきましょう。

〇腕周りを清拭する場合

腕周りは掌や指間の垢に注意しながら清拭をおこなっていきます。爪の間にも汚れが溜まりやすいので、気をつけて観察しておきましょう。利用者さんと握手するような形で、上腕に向かって拭いていくと、スムーズに清拭をおこなうことができます。

上腕〜腋の周囲も垢が溜まりやすいので、丁寧に拭いていきましょう。

〇上半身(胸部〜腹部)を清拭する場合

胸部は心臓に一番近い位置になるので、清拭タオルの温度に注意を払い、本人にも声掛けをして確認をとりながら進めていきましょう。

円を描くように清拭タオルを動かしていきますが、女性の場合、乳房の裏側には垢が溜まりやすいので、意識しながら確認しておきます。

腹部も同様にデリケートな部分なので、力を入れ過ぎないように気をつけながら、円を描くように清拭を進めていきましょう。

〇背部を清拭する場合

背部は体位を変えながら清拭を進めていきます。特に、骨が布団に接しやすい箇所(肩甲骨、仙骨部、臀部など)は褥瘡ができやすいので、皮膚が赤くなっていたりすることがあります。状態をよく観察したうえで、場合によっては他のスタッフや上司に報告しておきましょう。

〇下半身(足)を清拭する場合

足の清拭も指間の間や爪の間に汚れが溜まりやすいので、注意しながら観察しておきましょう。腕の清拭と同様に、踵を持ちながら拭いていくとスムーズに清拭しやすくなります。
膝裏も垢が溜まりやすい部分なので、注意しておきましょう。

〇陰部を清拭する場合

陰部は日常からの排せつ介助などで、汚れが溜まりやすい箇所です。特にデリケートな部分なので、力加減に注意を払い、丁寧に拭いていきましょう。

オムツやリハビリパンツを着用している利用者さんの場合、鼠径部に垢が溜まりやすいので、気をつけて観察しておきましょう。陰部に排便が残っているケースもありますので、状況によっては陰洗するのも有効です。

また、肛門周囲のただれ、傷などがないかも確認しておきましょう。

最後に

清拭には基本的なマニュアルがありますが、利用者さんの状況によって臨機応変に清拭を進めていかなければならないケースがあります。上記の順番は基本的なものですが、場合によっては上半身だけの清拭や、下半身だけの清拭をおこなう場合もあります。

特にデリケートな部分の清拭には、気温や清拭タオルの温度などに細心の注意を払いながらコミュニケーションを取っていきましょう。

また、大きなバスタオルなどで、必要以上の露出をさけ、相手の羞恥を守ることも非常に大切です。清拭の基本に沿って状況を判断し、ひとつひとつの手順を確実に消化していきましょう。

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